私の吉祥寺はafter acalaで｜第１話：井の頭公園の落とし物

2024/11/11Kichijoji

私の吉祥寺はafter acalaで｜第１話：井の頭公園の落とし物

吉祥寺の美容院acalaに通う常連客の物語

吉祥寺の美容院acalaに通う常連客を主人公とした物語です。acalaのプロモーションを目的に制作された作品です。

中央線沿線に住む主人公は、友人の紹介で吉祥寺の美容院acalaを知ります。

友人のオススメで試した髪質改善に感動し常連客となった彼女は、acalaの後に吉祥寺を散策するのが偶の楽しみとなりました。

第１話で訪れる井の頭公園では、一体何が起こるのでしょう？

本作の主人公のように、吉祥寺の美容院acalaを訪れる皆様に、心安らぐ一時をご提供できれば幸いです。

※本作品に登場する人物は架空の人物です。実在の人物とは関係ありません。

私の吉祥寺はafter acalaでーー第１話：井の頭公園の落とし物

私の吉祥寺は、いつもacala(アカラ)から始まる。

……温かい
鳥だろうか？
大きな美しい鳥が、火をふいている。
忍び寄る冬の寒さに、安心する温かさだ……

「終わりましたよ。」

その声に、目が開く。

夢うつつに見た鳥の炎の温かさのままに、脚の上のブランケットがぬくぬくしている。

いつの間にかけてくれたのだろう？

冬に限らず、ここに来ると、なんだか居心地がよくてつい眠ってしまう。

……美容師さんに呆れられたりしてないだろうか。

そんな私の心配を余所に、美容師さんはにこにこと声をかけてくれた。

「今日も綺麗になりましたね。」
「はい、ありがとうございます！」

鏡の中の私の顔も、にこにこだ。

美容師さんの手からさらさらと落ちる髪は期待通りに艶めいて、生まれ変わったような気持ちになる。

この瞬間が、私が吉祥寺を歩く理由だ。

だからいつも、after(アフター) acala(アカラ)が楽しくなる。

きっかけは、友人との再会だった。

癖が強く、天然パーマだと言って苦笑していた友人の髪が、きれいな艶のあるストレートになっていた。

新鮮な友人の姿に、縮毛矯正をかけたんだね、と言った。

すると彼女は嬉しそうに、手でその髪をすくうと、さらさらと落として見せた。

どこかのシャンプーのCMのように、噓のようにするすると落ちていった。

友人が話すことには、仕事の関係で美容院と関わり、髪質改善のメニューを試すことになったそうだ。

ドライヤーの時間も半分となり、家から遠くさえなければ、定期的に受けたいくらい感動したとのこと。

店の場所を教えてもらうと吉祥寺だと言う。

中央線沿いに住んでいる私にしてみれば、通える範囲だ。

早速次の休みに予約を取り、試してみた。

……そして私は、まんまとacala(アカラ)の常連になったのだ。

「今日はどこかお出かけですか？」
「そうですね、井の頭公園でも散歩しようかと。」
「いいですね、昨日少し歩いたら、ちょうど池のとこの紅葉(モミジ)が綺麗でしたよ。」

それはいいことを教えてもらった。

今日の私の吉祥寺は、井の頭公園のお散歩で決定だ。

外に出ると、冷たい風が髪をさらう。

きれいになったばかりの髪が、風にさらさらとなびく感触は楽しいが、さすがに肌寒い。

向こうの中道通り沿いに珈琲屋さんが何件かあったはず。

テイクアウトして、指先を温めながら公園を歩こう。

珈琲を片手に公園を歩くと、嬉しい誤算があった。

風に吹かれる度に、珈琲の香りがふわりと届くのだ。

相変わらず冷たいはずの風が、珈琲の香りと指先の温かさで、程よいアクセントになっていた。

そして池に枝を伸ばす紅葉(モミジ)が美しい。

……あ。

「あ、ごめんなさい……ウソっ！？ほんとごめんなさい！！」
「あー……大丈夫ですよ。」

ベージュのシャツに、茶色いシミができていた。

すれ違い様に相手の肩がぶつかり、珈琲がこぼれてしまったのだ。

幸い落とさずには済んだし、既に熱くもなく、シャツも使い勝手がよくて気に入ってはいたが思い入れがあるわけではない。

……これが買ったばかりのカーデガンの方にかかってたら泣いたけど。

ぶつかった相手の女性はおろおろとハンカチを差し出してきたが、既に自分のハンカチで拭いてしまった。

「ほんとにごめんなさい、大丈夫ですか？」
「大丈夫です、大丈夫ですので。」

苦笑しながら、逃げるようにその場を去った。

もっと気の利いたことを言えればよいのだけど、つい大丈夫ですと連呼してしまう。

避けるつもりだった人混みを抜け、座れそうな場所を探す。

……見つけた、一息つこう。

温(ぬる)なってしまった珈琲を飲み干して、スマホで珈琲のシミ取りについて検索する。

――カンッ――

何の音かと見やれば、隣の空いているスペースにドングリが落ちてきて、追いかけるように小さな鳥がやってきた。

……夢で見た鳥に比べれば、随分可愛らしい、普通の鳥だ。

すかさずカメラを起動する。

――パシャッ――

「あ……」

シャッター音はそれほど大きくなかったが、小鳥にとってはそうでなかったらしい。

写真は撮れたが、逃げられてしまった。

――パシャッ――

もう一枚、写真を撮る。

同じアングルで、取り残されたドングリを。

……うん、二枚を並べるといい感じだ。

いなくなれば、戻ってくるだろうか？

私は落とし物をそのままに、井の頭公園を後にした。

――次回に続く――